129163 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

blabonのページ

blabonのページ

虹の橋2006 第2章 再会 第3話 ラブ

◎ 虹の橋2006
第2章 再会 第3話 ラブ

登場人物  ラブ

みなさん、初めまして、ラブです(^^)
いつもうちのお母さんと仲良くしてくださってありがとうございます

私が橋を渡ってから、こちらでの友達もずいぶん増えました

天国組


今年の夏はずいぶん暑かったね
それは、気温だけのせいじゃなくって、こちらの世界の人がお盆に里帰りをして大騒ぎしてきたみたいだからね

でも本当はこちらの世界には、時間や空間というものはないので地上のどの季節のどの時間にでも行こうと思えば行くことが出来ます
それで、私もみんなと一緒に出発したんだけど…

---------------------------------------------------------------------

私の行きたい季節は、みんなのようにお盆じゃなくって、もちろん、クリスマス(^_-)

私はこちらに来たときに光さんに背中に着けていただいた大きな翼を羽ばたかせました
と、そこで私は大きな忘れ物をしたことを思い出しました
そう、シェフを連れてくるのを忘れてた~(T_T)

私はシェフが作った広い広いお花畑の上を翔んで、いい匂いのする厨房へ行きました
「シェフーっ、行くわよ早く早く!!」
「ラブ!悪いけど1人で行ってくれ。早うごちそうを作らな、クリスマスにみんなに食べさせられへん^^;」
「そんなぁ(-_-;)」
「僕は毎年バレンタインに彼女に会いに里帰りしてるから、お前1人で帰ってくれ」

シェフは汗だくになってフライパンを振ったりオーブンを開けたりしています
ダクトから吸い込まれた煙は、吐き出されるときにはきれいな花びらになって、そこら中を舞っています

「ラブ、そんなにむくれるなって(^^;) 僕が手を休めたらクリスマスを楽しみに待っている世界中の人達に申し訳が立たへん」
やれやれ、いつもシェフはこうなんやから…
いっつも、自分のことは後回し…でもそれがとてもうれしそうなのです


仕方なく、出発の準備をしていると光さんがやって来ました
「ラブ、いい方法があるの、それはね…、……するでしょ?そして…するの。そうしたら……出来るでしょ(^^)」
「ええ~っ、光さん、いいんですか?そんなことしちゃって」
「大丈夫よ、じゃあ行きなさい」
そういって光さんは私に大きな袋をひとつくれました

---------------------------------------------------------------------

私は翼を大きく広げました
地上へは、羽ばたかなくても降りていけるのです

私が暮らした楽しかった思い出の詰まったマンションが見えてきました
窓からのぞき込むと、夜も遅いのにお母さんが1人で机に向かって何か書いています
そうです、冬休みになってようやく仕事が一段落したお母さんは年賀状書きに追われているのです

光さんが、クリスマス前やから暖炉の煙突から入らなあかんって言ってました
変な現れ方はしたくないけど、光さんが言うんだから仕方ありません

ドッスン!!バリバリ

私は暖炉の灰の上にヘソ天姿で落下しました
灰が部屋中に舞い上がります

「うっわっ、何なん、うっ…」
お母さんのあわてた声が聞こえます
灰で灰で何も見えません

「消防呼ばな、警察呼ばな、テロや、サリンや!!」
お母さんはパニック状態です
その時私の頭の中に「ダクトのスイッチを入れろ」というシェフの声が聞こえました

私が記憶を便りに換気扇のスイッチを入れると、灰はどんどん吸い込まれ、部屋の中はきれいになり、次の瞬間シェフの厨房のように、無数の花びらがまるで粉雪のように上から降ってきました

---------------------------------------------------------------------

うわぁ、きれいやなあ…
そう思って私が見た先には、お母さんが「ラブさん、おいで」と言うように両手を大きく広げてこちらに向かって立っていました
目は昔と同じようにやさしく笑っています

「お母さん!」
「ラブさん(T_T)」
「お母さん、お母さん(T_T)」
「ラブさん…」

lab


…視線を感じて振り向くと、ノエルとゆばが部屋の入り口からのぞき込んでいます

noel&yuba


「あんたたち…」
「ラブお姉ちゃん、お帰りなさい」

「お母さん、ただいま。シェフを置いといて私だけ帰ってきてしもて、ゴメン」
「何言うてんの。シェフが来られへんのは、事情があるんやろ。昔から自分のことそっちのけやったからなあ(/_;)でも、それがあの人の一番良いところやわあ」
お母さんの目がハートの形になっています

「それでね、その代わりに光さんがね(^^)……」
「いやや!私はまだ死なれへん理由があるの!」
「誰も死ぬ言うてへんかんや(^^)」
「あかんの!まだ逝かへんの!」

もう、こうなりゃ仕方がありません
私は光さんから貸してもらったサンタの袋を取りだし、その中にお母さんを押し込みました
「ひっ、人殺しぃ(T_T)人さらいっ!小百合、ちる、ノエルゆば、黙って見てないで助けんかいな!」
ノエルとゆばとお姉ちゃん2人は、助けるどころか手伝ってくれました(^^)/
みんなでお母さんの入った袋をベランダまで担ぎ出すとそこにはなんとサンタクロースがソリを停めて待っていてくれました
「やあ、メリークリスマス(^^)、早くソリに載せとくれ」

私はお母さんの入った袋をサンタクロースに任せ、他のみんなをソリに乗せました
トナカイさんはソリを引っ張り始めました
ソリからはスズの音が聞こえてきます
私たちは夜景を見下ろしながら、空高く上っていきます

reindeers


---------------------------------------------------------------------

もう大丈夫です
私は、袋をゆるめました
「ラブさん、どうして…どうしてこんなことするん?」

…お母さん、ごめんね。実はね、私1人で帰ってきたら申し訳ないから、シェフに一緒に来てくれるように誘いに行ったんやけど、シェフはクリスマスの準備が忙しくて、楽しみにしている世界中の人のために仕事を休むことは出来ないって…
…でもね、私はいつもみんなのためにこちら側で頑張っているシェフと、地上で頑張っているお母さんに会ってもらいたい…そしたらね。光さんが、お母さんをこちらに連れてきてシェフの仕事を手伝ってもらったら、シェフも仕事を止めないで済むし、2人に会ってもらえるから一番いいよって、本物のサンタさんに力を貸してくれるように頼んでくれたの…

ソリは、広大な花畑の上を滑ります
「お母さん、このお花畑はね。シェフのものなの。でもシェフがこちらに来て一から作ったものじゃなくって、シェフが地上でお母さんやお姉ちゃん達と育んだ愛の力で、誰も知らない間に花畑が出来て、こちらに来るときはこの花畑がまぶたに浮かんで、まっすぐここを目指して橋を渡ったんだって」
「(T_T)」

「ほら、シェフの厨房が見えてきたわよ」
厨房の煙突からは煙の代わりにきれいな黄色の花びらが吹き出しています
私は厨房の手前のお花畑にソリを停めました
「ちょっとラブさん、お母さんお化粧もして来んかったし、かなんわぁ」
「ええから、ええから(^o^)」
私はお母さんの背中をそっと押しました

お母さんは、二人の娘と手をつなぎながら厨房に入っていきました
奥からはダクトの回る音と、フライパンがコンロをこする音、それにおいしそうなお料理の匂いが漂ってきます
お母さんがお姉ちゃん達を握る手の力が強くなります

おそるおそる奥を覗くと、見えて来た来た(^^)/
白い料理人の仕事着に赤のマフラー、背の高い帽子
シェフです

chef&lab


ワインをお肉に振りかけると、フライパンから大きな炎が上がります
ダクトは忙しそうに回り、オーブンからは甘い匂いがしています
シェフの頭の上には氷を削って作ったような、透明でしっかりした輪が浮かび、背中にはラブさんと同じような翼がついています

「シェフ…(T_T)。ラブさん、かなんわ。シェフ若いやんか…結婚前の若さやわ(T_T)」

私は、翼で二度三度、お母さんの方に風を送りました
するとどうでしょう?
お母さんは、みるみる若くなりました
「お母さん、私らと姉妹みたいやん」
お姉ちゃん達はびっくりしています
どうやらお母さんはシェフと初めて会った時の年齢に戻ったみたいです(^^)

「シェフ!」
「ラブ、もう帰って来たんか?」
シェフは顔はフライパンを見たままで言いました
「ラブ、次のサンタさん呼んでくれ!ケーキが焼けた」
「はーい」
私が合図すると、サンタさんの乗ったソリが厨房に横付けになりました

---------------------------------------------------------------------

「よーし!出来たぞ~っ(^^)/」
シェフはそういいながらこちらを向きました
「…!」
「……(T_T)」

「……!!」
「(T_T)」

「blabon?…blabonか?」
「シェ…フ…(T_T)」

シェフは走ってきました
お母さんも走っていきました

2人は激しくぶつかりました
お母さんはシェフの右の頬に自分の右頬をこすりつけて、抱き付きました
シェフはお母さんを抱きしめたまま、くるくると2回まわりました
シェフの帽子は脱げ落ちました(*^_^*)
2人からこぼれた涙は、すぐに花びらに変わります

それから少しの間は、私は気を利かせて目を閉じておきました(-_-)
「小百合…かい?」
「はい…お父さん(T_T)」

「隣はちるやな?」
「(T_T)」
ちる姉ちゃんはこっくりとうなずきました

シェフは2人のお姉ちゃんも両手にしっかり抱きしめました
「いい娘になったなあ、2人とも…」

「あのぉ……」
オーブンの前の方から、申し訳なさそうな声が聞こえました
白わんの、めいちゃんです

「シェフ、お取り込み中、悪いんやけど…」
「???」
「焦げてるんですけど…」

---------------------------------------------------------------------

「えらいこっちゃ!泣いてる場合とちゃう、ケーキ入れたままやったっ!」
外には次々と料理を待つソリが到着します

「みんな、悪いけどちょっとの間、これ貼って手伝っておくれ」
シェフは、みんなの目元にしわパッチをつけながら言いました

お母さんは、お魚とお肉の下ごしらえをします
「blabon、上手になったなあ」
「シェフの教え方が良かったんよ(^^)/お料理にはちょっと自信あるんやから」

シェフは、お母さんの仕込みをした材料を使ってフライパンやオーブンを使います

小百合姉ちゃんとちる姉ちゃんは、お皿を並べてお料理を盛りつけたり、ラップしたりしています(^^)/

それを私とノエル、ゆばの3人でソリに載せます
ソリはひっきりなしに到着しては、出て行きます

3日間みんなは座る間もなく働き続けました
そしてようやく最後のソリを送り出しました

---------------------------------------------------------------------

2人のお姉ちゃんと、ノエルゆばはシェフが用意した雲のベッドで眠ってしまいました
大仕事を終えたシェフは、次に家族だけのための料理を作りました
「あ、君は手伝わんでもいい」
シェフはお母さんを雲のソファに無理矢理座らせて、お料理をお星様でできたテーブルに並べ、隣に座りました
2人は胸の前で手を組み頭を垂れました

2人の胸の中に同時に、出会いから別れまで、そしてその後の今日までが走馬燈のように映し出されました
お母さんはシェフの肩に頭を載せました
シェフは左手で優しくお母さんの髪を撫でます

「blabon…ありがとう…、ありがとう(T_T)」
「シェフ、ごめんね何も出来へんかって…」
「何言うてんの、あんなにしてくれたやないか」
…あのな、僕はこちらに来ても君や子供達と暮らしたあの幸せな毎日のことは忘れたことはない。歳こそ離れた2人やったけど、僕はこんなに分かり合えることがあるのかと思う位、君とは心が通じていたと思うてる。

…子どもが生まれて、これからと言う時に…君もつらかったやろ。ごめんなあ
…え?僕も苦しかったやろって?

…それはちょっと違う。「献身」って言う言葉あるやんか?自分が病気になるまでは、僕は『人間は結局自分がいちばんかわいいんや』って思っていた。けどなあ、君が僕の病名を僕に隠して笑顔で、笑顔の裏側では僕の身体に少しでも良いものをって、工夫して毎日毎日作ってくれて…僕は、人間にも自分以上に大事なものがあるって、君に教えてもらったんや

…そやのに、その気持ちに答えられんと、だんだん痩せてしもうて、時々そんな自分が悔しくて君につらく当たったこともあったんやないやろか?
…けどな、最後の方は目がギョロッとしてたって君は言うけど、それは痩せたからとは違う。自分のために身を削って支えてくれた「献身」をしてくれた最愛の人の姿を、そしてその人との間に授かった宝物を両目をカッと見開いて見て憶えておきたかった

…それに、最後に君と洗礼を受けることが出来たことは、最高にうれしいことやったよ
…僕がおらんようになって、苦しいこともいっぱいあったやろ?でも、人生を投げ出さないでよく生きてくれた
…2人の娘も立派に育ててくれたなあ、ありがとう。君らは僕の自慢や(T_T)

---------------------------------------------------------------------

「…(T_T)ありがとう、シェフ…」
…それとなあ、君に伝えておきたいことがある。君はこれからもっともっと幸せになりなさい。なんでかと言うたら、それが僕の幸せやから…。君はもう知ってるやろ?こちら側は決して嫉妬の無い世界やということを

…君がうれしい時は僕も笑う。君が悲しい時は僕も涙を流す。君が恋する時は、僕もワクワクしてうれしい。うそとちゃう。なぜなら僕は君の中にいるから、君の感じる思いはそのまま僕の思いやってことや

…ええか?幸せになるんやで!

お母さんは、シェフの肩に額を押しつけて、イヤイヤをするように頭を振りました
「もう(^^)世話の焼けるやっちゃなあ。これならわかるやろ!」

シェフはお母さんをギューーーッと抱きしめました
お母さんも目をつむって思いきり力を込めました
すると、お母さんの両手はだんだん狭まって、シェフの姿は何もなくなりました

「シェフ?シェフ!どこ?どこ行ったん?」

…そやから、ここやて、言うてるやないか!
「どこなん、どこにいんの?」
…ここや、しっかりしろ!

お母さんは胸に手を当てました
…分かったか?
シェフの声はお母さんの心の中から聞こえました
…僕は君と二度と離れることなんかない。君の心の中にいつもいる。君が心に感じたこと、君の思いはそのまま僕の思いなんや!心配な時は胸に手を当ててみ。僕も一緒に考えよう
「…分かった(T_T)」

---------------------------------------------------------------------

そう言って目を開けると、お母さんの隣にはまたシェフが優しい目をして座っていました
そして子供達もノエル、ゆばもテーブルを囲んでいました
「ねえ、あの歌をもう一度歌ってくれないか?賛美歌199番」
どこからともなく、パイプオルガンの音が聞こえてきました
お母さんが歌い始めるとみんなもそれに続きました

「さあ、食べよう」
メリークリスマス!メリークリスマス!
食事をしながらシェフは色々な楽しい話をしてくれました

ラブもノエルもゆばも実はシェフが送り出したものであること
ゆばは「イブ」っていう名をつけて送り出したのに、地上についたら「ゆば(^^)」っていう名になっていたことなど…

みんな、おなかがよじれるくらい笑いました

---------------------------------------------------------------------

目が覚めるとお母さんは、マンションのお部屋にいました
「何なん?…めっちゃ不思議な夢やったわ」
あくびをしながら起きたお母さんは、リビングに夕べ夢の中で食べたのと同じお料理が並んでいるのを見つけました

お母さんは、胸に手を当てて目を閉じました
…分かったか?(^^)
「分かった、シェフ、メリークリスマス」
…ああ、メリークリスマ~ス!(^^)!

シェフの声がはっきり聞こえました(*^_^*)



© Rakuten Group, Inc.